2022.5.12
コンクリートの爆裂は危険?原因と補修方法を解説
鉄筋コンクリートの建物でよくある不具合といえば、コンクリートの爆裂現象です。
コンクリートが爆裂すると建物の耐久性を著しく損ねる原因にもなるため、そうなる前に適切な処置を行うことが大切です。早めに処置することで深刻なダメージを回避し、さらには再発を防止することも可能です。
今回は、コンクリートの爆裂現象が発生するメカニズムについて、また適正な補修方法や注意点なども解説します。
コンクリートの爆裂とは?
コンクリートの爆裂とは、鉄筋コンクリート内部の鉄筋がサビて膨張し、内側からコンクリートを破壊して押し出す現象のことをいいます。
コンクリート表面が一部欠落したり、鉄筋が露出してきたりサビ汁などが見られるため、目で見て確認することができます。
また目に見えない部分に起こった爆裂も、ハンマーや打診棒などで叩いて音の違いで発見できるので、表面に出てくる前に確認することも可能です。
コンクリートの爆裂が起こる原因とは?
コンクリートの爆裂現象は、コンクリートが劣化して出来たひび割れがきっかけとなることがほとんどです。
乾燥収縮などでコンクリートの表面に小さなひび割れがでてくるのはよくあることですが、ひび割れによっては空気中の炭酸ガスや雨水を徐々にコンクリート内部に侵入させてしまう場合があります。
通常、コンクリートはアルカリ性で保たれていることから、内部の鉄筋がサビることはありません。しかし、ひび割れから空気中の炭酸ガスが侵入してくると、コンクリートに含まれる成分が反応しアルカリ性から中性に傾く「中性化」が進みます。「中性化」が徐々に進行し鉄筋まで到達すると鉄筋はサビを発生させるのです。
また鉄筋とコンクリート表面までの距離が短い「かぶり不足」や、コンクリート打設時の打継時間が長くなることで起こる「コールドジョイント」なども爆裂につながる原因になります。
なお、コンクリートの中性化については「コンクリートが中性化する原因と効果的な2つの対策」の記事でくわしく解説しています。
コンクリートの爆裂の危険性とは?
コンクリートの爆裂には、建物の寿命を縮めてしまうという危険性があります。
鉄筋コンクリートの建物の鉄筋がサビてしまった場合、コンクリートの中にある鉄筋を交換するということは非常に難しいです。【鉄筋がサビる=建物の寿命】と言っても過言ではありません。
建物の寿命を延ばすには、施工段階でかぶり厚を確保することや高性能なコンクリートを使うことなどの方法がありますが、既存の建物の場合はメンテナンスを行うしかありません。定期的に点検を行い、必要に応じて補修をしながら維持管理することが重要です。
コンクリートの爆裂の補修方法
コンクリートの爆裂箇所は適切な方法で補修処理をする必要があります。
主な補修手順は以下の通りです。
- ①コンクリートの爆裂箇所の調査
- ②爆裂補修箇所のハツリ
- ③鉄筋のサビ落とし、浸透強化、防錆処理
- ④樹脂モルタルやポリマーセメントモルタルでにて埋め戻し、成形
- ⑤乾燥養生~塗装
①コンクリートの爆裂箇所の調査
すでに鉄筋が露出している部分や、コンクリート表面の浮き、あるいは打診調査などで爆裂箇所を調査のうえマーキングします。
②爆裂補修箇所のハツリ
サビのある鉄筋が露出するまで、周辺コンクリートの脆弱部分をハツリ落とします。
③鉄筋のサビ落とし、浸透強化、防錆処理
鉄筋のサビを、ブラシなどを使って丁寧に落とします。
周辺をきれいに掃除し、浸透強化剤やサビ止め塗料などで防錆処理をします。
④樹脂モルタルやポリマーセメントモルタルにて埋め戻し、成形
補修部分に仲介接着剤などを塗布した後、コテを使って樹脂モルタルやポリマーセメントモルタルで埋め戻し、成形します。
⑤乾燥養生~塗装
樹脂モルタルやポリマーセメントモルタルが硬化、乾燥したら塗装仕上げを行います。
爆裂は鉄筋のサビ、腐食によって引き起こされます。
したがって重要なポイントは、鉄筋のサビ落とし、適切な防サビ処理、接着力の高いポリマーセメントモルタルを使用する事です。
コンクリート爆裂の補修のポイント
コンクリート爆裂を補修するときに必ず押さえておきたいポイントがあります。
そのポイントとは大きく2つです。
- ・コンクリート脆弱部分をすべて取り除く
- ・鉄筋のサビをすべて取り除く
ひとたび鉄筋がサビると、膨張して爆裂が起こり周辺のコンクリートを内側から破壊します。その後、破壊された部分からさらに中性化が進み、鉄筋のサビも範囲を広げていきます。
つまり【コンクリートの中性化→鉄筋のサビ→爆裂→さらにコンクリートの中性化】といった悪循環が生まれるのです。補修を行う場合、このサイクルを完全に断つ必要があります。
そのためには、コンクリート脆弱部分をすべて取り除くことと、鉄筋のサビをすべて取り除くことを確実に実施しなくてはなりません。
コンクリートの脆弱部分が残っていると、補修後もひび割れや欠損が起こりやすく、そこから水分や空気が入り込み中性化が進行します。また鉄筋にサビが残っていると、補修後にも症状が進行して再度爆裂を引き起こす確率は高いでしょう。
コンクリート爆裂を補修するときは、この2つのポイントを確実に押さえ、根気強く丁寧に行うことが重要です。
コンクリートの爆裂を予防するには早めの対処を!
コンクリートの爆裂を予防するには、劣化症状が軽い段階から補修することが大事です。
コンクリートの劣化症状でまず現れやすいのはひび割れです。このひび割れに適切な処置をとることで、爆裂などの事態を回避することができます。
ひび割れといっても様々な程度のひび割れが存在しますが、0.3mm未満かそれ以上かで対策が変わってきます。
0.3mm未満のひび割れ
ヘアークラックといって、一般的に危険性は低く補修しなくてもよいとされています。
ポリマーセメントペーストなどで被膜することも有効ですが、経過を観察し規模が大きくなるようなら補修を検討するということでよいかもしれません。
0.3mm以上のひび割れ
危険がともなう可能性が高いため補修が必要になります。補修方法はおもに以下の2つです。
- ・注入工法
- ・充填工法
注入工法
注入工法とは、専用の注入器具を使用しひび割れ内部にエポキシ樹脂などを注入する方法です。時間をかけてじっくりと圧力を加えながら注入することで、ひび割れの奥深くまで入り込んで確実に躯体と一体化することが可能になります。
信頼性があり、ひび割れの補修工法としては最も普及しています。また施工もそれほど難しくなく、手順を踏まえて行えばDIYが可能なことも特徴のひとつです。
弊社でも「SSSボンド」というDIYが可能な注入キットを販売しています。
「SSSボンド」は、カートリッジタイプとなっており、現場での面倒な計量を省きながらモルタル等の浮き、ひび割れ部分を固定できるシステム化された注入材です。
充填工法
充填工法とは、ひび割れ周辺部分をサンダーなどの工具を用いU型やV型に削って、シーリング材やエポキシ樹脂などを充填する方法です。
充填工法は、ひび割れの幅が比較的大きい場合に採用されている方法になります。
このときに注意しなくてはいけないのが鉄筋の状態です。
すでに鉄筋がサビている場合、必ず鉄筋を露出するまでコンクリートを削り落とし、サビ落としや防サビなど適切な処理をしたうえで補修へと移行しなくてはいけません。この処理を怠ってひび割れだけの補修をした場合、非常に高い確率で再発することになるでしょう。
特に鉄筋のサビが見られるケースでは、専門的な知識と技術が必要になります。必ずプロの業者に相談のうえ、正しい補修が行われることが重要です。
コンクリート爆裂で注意しておきたいことは?
コンクリートの爆裂がある場合、最も重要なことは放置せず早めに適切な処置をするということでしょう。
一度鉄筋がサビると、その範囲は拡大していきます。そうなると建物の耐久性は徐々に低下し、適正な寿命を守ることはできません。
またコンクリートの脆弱部分が欠落することによって、コンクリート片落下により第三者に損害を与える可能性もあります。
コンクリートに爆裂がある場合や、表面にサビ汁が確認できる場合など、不測の事態に陥る前に早い段階で適切な補修を実施することが重要です。
コンクリートの爆裂まとめ
- ・コンクリートの爆裂は、劣化によって起こる
- ・爆裂は建物の寿命を縮めてしまう危険性がある
- ・早い段階から適切な処置をすることが大事
コンクリートが劣化することは避けられませんが、点検やメンテナンスを確実に実施することで、多くのリスクは回避することが可能です。できるだけ早期に発見し状況に応じた適切な処置をすることが、建物の機能維持、そして資産価値の維持にとっても重要といえるでしょう。
また調査には専門の知識がある業者に依頼することも重要なポイントです。
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