2020.5.17
サイディングの直張り工法は危険?メンテナンスの方法は?
いまや住宅の外壁で採用される仕上げ材といえば「サイディング」が圧倒的なシェアを占めています。
そのなかでも、セメントと木質繊維を混合した窯業系サイディングが最も多くなります。
「サイディング」が本格的に普及し始めるのは1990年代に入ってですが、当時は「直張り工法」によって施工されることが一般的でした。
ところが、「直張り工法」で施工された「サイディング」は構造的な問題からさまざまな不具合を生じることになります。
そこで今回は「サイディング」の「直張り工法」はどうして危険なのか、そして「直貼り工法」のメンテナンスはどうするべきなのか解説したいと思います。
サイディングの直張り工法とは?
サイディングの直張り工法とは、構造躯体に防水シートを張り、その上に直接サイディングを張り付ける工法になります。
そのため、直張り工法で施工されたサイディングは、裏側に水分が入り込んでも逃げ道がありません。
その結果、サイディング本体が吸水してもろくなったり、カビや木材の腐朽が発生したりする原因になるのです。
また構造が濡れて腐ることがあると耐久性は著しく低下することになるでしょう。
過去には主流の施工方法でしたが、現在は「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」の標準工法でもある「通気工法」によって施工されることがほとんどです。
「通気工法」とは、構造躯体に防水シートを張り、その上に胴縁を取り付け、胴縁に対してサイディングを張り付ける工法になります。
胴縁を取り付けることで空気が通る通気層を設け、サイディングの裏側に水分が入り込んでも排出や乾燥が可能になったことが大きく変わった点になります。
直張り工法は、建物にとって大敵でもある湿気を適切に逃がすことができない構造であるため、不具合が多く発生し建物の耐久性を損ねる原因をつくることになったのです。
サイディング直張り工法のメンテナンス方法とは?
サイディングが直張り工法で施工されている場合、湿気を含みやすいことから劣化の進行は早くなる傾向にあります。
建物の耐久性に影響を与える可能性もあるため、しっかりと対策を講じなければいけません。
直張り工法のメンテナンス方法は、大きく以下の3つです。
- ・塗装
- ・重ね張り(カバー工法)
- ・張り替え
塗装
サイディングの表面を塗り替える方法です。
しかし劣化が著しく進行し、サイディング本体が吸水して塗膜が激しく剥がれてしまっている場合などは、塗装できないケースもあります。
その場合は、すでに構造を激しく傷めている可能性もあるため、張り替えを基本として考える必要があるでしょう。
劣化の症状がきわめて軽い場合、透湿性の高い塗料を使って塗り替えるとサイディングが含んだ湿気を表面から排出する効果が期待できます。
透湿性の高い塗料は、湿気が原因で起こる塗膜の浮きや剥がれなどのリスクを抑えることも可能になります。
ただし湿気がたまりやすく建物へダメージを与えやすい構造に変わりないということは理解しておく必要があるでしょう。
重ね張り(カバー工法)
重ね張り(カバー工法)は、既存のサイディングを残し、その上に新たなサイディングを張る方法です。
既存のサイディングを解体しないため、廃材処分費がかからないことや、人件費を抑えられることから、比較的安くメンテナンスができます。
さらに、新たな通気層を設けられることから、断熱性や防音性の向上が図れる点も大きなメリットとなります。
ただし、すでに劣化が著しく進行している場合は、重ね張り(カバー工法)をしても効果は期待できません。
このケースでは、下地のコンディションをチェックしたうえで張り替えを検討する必要があるでしょう。
また、重ね張り(カバー工法)をする場合は建物が重くなるため、耐震性では不利になります。
よって、金属サイディングや樹脂サイディングなど、軽量の材料を使う必要があることは注意が必要です。
なお、サイディングの種類ごとの特徴については「外壁材の主流サイディングってなに?4つの種類とその特徴を解説」の記事を参考にしてください。
張り替え
既存のサイディングを解体し、新たなサイディングに張り替える方法です。
直張り工法は、そもそも構造として問題が多いため、長く建物を維持したいと考えているなら通気工法で張り替えることを基本に検討することが重要になります。
とくに劣化症状が著しい場合は、構造部にまで被害が及んでいる可能性もあるため、一旦サイディングを撤去した状態でコンディションチェックをするとよいでしょう。
ただし張り替えをするには、工期が長期に及び、そしてコストも高額になってしまう点では注意が必要です。
なお、一定の要件を満たし「外壁通気構造化」リフォームを実施すると補助金を受けられる「長期優良化リフォーム推進事業制度」を利用することも有効です。
サイディング直貼り工法:まとめ
直貼り工法はかつての標準工法だった経緯から多くの実績があり、そしてまだ多くが残存しています。
劣化の状況に応じた適切なメンテナンスを実施し、長期的な資産価値の維持を図りましょう。