2022.4.16
タイル浮きの原因は?補修方法や調査方法にはどんなものがある?
所有している建物のタイルの剥落…
その時下に人が居たら…考えただけでも恐ろしいですね。
日頃から定期的に外壁診断を行い、劣化部分を補修・改修を行うことで剥落事故は防ぐことができます。
今回はタイル浮きはどのようにして起こるか、補修方法や調査方法はどのようなものがあるのかについてご紹介いたします。また、竣工後10年を超えるビル、マンション等の特定建築物に義務付けられている「外壁全面診断」についても解説いたします。
タイル浮きとは?
タイル浮きとはコンクリート構造物と、貼り付けられたタイルやモルタルなどの外壁仕上げ材との間にできた隙間(浮き)のことを指します。
タイル浮きには「下地浮き」と「陶片浮き」の2種類あります。
下地浮き
下地浮きは、タイルを接着しているモルタルがコンクリート構造物から浮いている状態のことを指します。
陶片浮き
陶片浮きは、タイル自体が接着用のモルタルから剥離している状態のことを指します。
タイルはモルタルなどの外壁仕上げ材を介してコンクリート面に固定されるため、通常は下地浮きになることが多いのですが、稀にタイルとモルタルが剥離することがあります。
下地浮きの場合、エポキシ樹脂の注入やピンニング工法(工法の詳細については後程解説いたします)によってタイルの剥離を修復することが可能ですが、陶片浮きの場合、タイルとモルタルの間にエポキシ樹脂を注入しづらいため、タイルの張り替えが必要になってしまいます。
また、下地浮きの場合でも浮き枚数が少ない場合はエポキシ樹脂が注入しづらいことがあるため、一番確実に補修を行える張替えをおすすめすることがあります。
タイル浮きの原因とは?
タイル浮きの原因の一例として、以下のものがあげられます。
・経年劣化(日照)
・地震
・湿度
・施工不良
・モルタルの質
・コンクリート構造物からの影響
経年劣化(日照)
日照によって膨張と縮小を繰り返すことで付着力が低下し、発生することがあります。
地震
揺れや歪みなど、外力が加わることで付着力が低下して発生することがあります。
湿度
目地からの吸水・乾燥によって膨張と収縮を繰り返すことで付着力が低下し、発生することがあります。
施工不良
剥離剤が残留していたり、たたき不足(圧着不足)などが原因でタイル浮きが発生することもあります。
モルタルの質
質の悪いモルタルで接着したことが原因で発生することがあります。
また、モルタルの水分が蒸発して硬化不良になった場合(ドライアウト)や強度不足もタイル浮きの一因とされています。
コンクリート構造物からの影響
コンクリート構造物にひび割れなどが生じるとその影響でタイルに割れや浮きが発生するケースがあります。
コンクリート構造物からの影響で浮きが生じている場合は危険度が高い状態ですので、早めに専門家に診断してもらうことをおすすめします。
なお、コンクリートのひび割れ補修に関する詳しい内容は「【コンクリートひび割れ】発生原因と補修方法!適切な補修材は?」の記事を参考にしてください。
タイル浮きの補修方法
タイル浮きの補修は、以下のような工法があります。
・アンカーピンニング工法
・塗替え(張替え)工法
・外壁複合改修構工法(ピンネット工法)
・エポキシ樹脂注入工法
・タイル除去Uカットシーリング工法
それぞれ解説いたします。
アンカーピンニング工法
浮きが発生している箇所にエポキシ樹脂などの接着剤を満遍なく充填し、補強用のステンレスピンを埋め込んで浮き部全体をアンカーピンと接着剤で固定させる工法です。
接着剤とアンカーピン、二重の補強によってタイルの剥落を防ぎます。
張替え工法
比較的広範囲にわたって浮きの症状があり、打撃や揺れなどによって剥落する恐れがある場合に適用される工法です。
外壁複合改修構工法(ピンネット工法)
アンカーピンで固定し、ネットで補強することで剥落を防ぐ工法です。
外壁全体を被覆するため発生している浮きだけでなく、潜在的な浮きの剥落を防止する効果も期待できます。
なお、躯体コンクリートがひび割れている場合はコンクリートの内部に雨水が侵入しないよう早急な補修工事が必要となります。
エポキシ樹脂注入工法
ひび割れしているコンクリートの内部にエポキシ樹脂を注入し防水処理を施す工法です。(0.1mm以下のひび割れには適していません)
タイル表面にひび割れ跡が残ってしまうため美観は損なわれてしまいます。
タイル除去Uカットシーリング工法
ひび割れしている部分のタイルと下地を撤去した後、シーリング材を充填し新しいタイルを張り付ける工法です。 タイルの在庫があれば既存のタイルとの差異は比較的少なくて済むのですが、経年劣化のタイルと新品のタイルとでは多少の差異は生じてしまう恐れがあります。
タイル浮きの調査
タイル浮きの調査は、打音調査と赤外線画像診断の2種類の方法があります。
打音調査
打診棒や打診ハンマーを用いてタイルの浮き・剥離を検知する方法です。
打音調査では精度の高い結果が得られると同時にひび割れや目地の確認、白華現象(エフロレッセンス)などの調査も行えるといったメリットもあります。
タイル浮きは音で分かる
打音調査は、打診棒でタイルを叩いた時の音で症状を診断します。
タイルのみが浮いている場合、金属音に近い高い音が響くのに対して、モルタルとコンクリート構造物の間が浮いているような場合は、ボコっとした低音になります。
赤外線画像診断
赤外線サーモグラフィと呼ばれる赤外線カメラを用いた調査方法です。
タイルが剥離している箇所には空気層ができるため、剥離していない箇所と比べると日射による熱上昇が大きくなるという性質を利用して調査を行います。
赤外線画像診断のメリットは、打音調査より費用を大幅に下げることができる点です。ビルなどの大きな建物の場合、打診棒による調査だと足場やゴンドラを設置しなければいけないため、どうしても費用が高くなってしまいます。
ただし赤外線画像診断は、検知する際に障害物があると検出感度が低下してしまうほか、仰角や測定面に対する角度が大きいと測定誤差も大きくなるなどといった不確実さもあります。
外壁全面診断を行う理由が補修工事をする為に行うのか、特定建築物定期報告の為に行うのかによって調査方法を決めるのがおすすめです。
外壁全面診断とは?
劇場、映画館、百貨店、病院、ホテル、共同住宅等の特殊建築物に類する一定規模以上の建物は、不特定多数の人々が利用するため、災害が起こった際には大惨事になる恐れもあります。
そのため平成20年に建築基準法第12条が改正され、竣工後10年を超えるビル、マンション等の特定建築物は「外壁全面診断」が必要となりました。
それ以前にも外壁診断義務はありましたが、怠った場合の罰則は設けられていませんでした。しかし定期報告が適切に行われていなかったことが原因の事故が多発していたため、定期報告の調査・検査の項目、方法、判定基準を法令上明確にし、定期報告を行わなかったり、虚偽の報告を行った場合は、罰則(百万円以下の罰金)となりました。
外壁全面診断は特定建築物が対象となっていますが、特定建築物は以下のものになります。
・特殊建築物定期調査の部分打診、目視等により異常が認められたもの
・竣工後10年経過した建築物
・外壁改修等から10年経過した建築物
・外壁全面打診調査後10年経過した建築物
ご自身が所有する建物が調査義務があるのか分からないという方は、外壁全面診断の対象となっている建物なのかお調べ致しますので、まずは弊社までお気軽にお問い合わせください。
タイル浮きの調査は専門の業者に依頼するのが確実
外壁というのは常に日照や風雨に晒されているため最も劣化しやすく、劣化したタイルやモルタル等の剥落事故によって死傷事故に繋がってしまう恐れもあります。
定期的に外壁診断を行うことによって事故を未然に防ぐことができますし、早期に劣化部分を補修・改修することによって建物の耐久性を伸ばすことができます。また、大掛かりな修繕工事になると改修費用も高額になってしまいますが、こまめに補修をしておくことで修繕費用を抑えることができます。
タイル浮きの調査は、知識と経験豊富な専門業者にご依頼いただくのが確実です。弊社まで是非お気軽にお問合せください。
ヤブ原産業株式会社 本社