2024.1.15
【左官に関する豆知識】スサ・色土の種類と特徴
前回、左官材料の1つ「固化材」について紹介しましたが、今回は「スサ」「色土」について詳しく紹介していきたいと思います。
左官材料「スサ」とは?
スサ(苆)は、左官材料に混入される繊維状材料の総称で、壁土に繊維質のスサを混入することで、収縮・クラックを減らし、曲げ強度を強くすることができるものです。
スサは補強効果のほかにも材料の水持ちや鏝滑りを良くするなど作業効率を上げる効果もあります。
スサの歴史はきわめて古く、旧約聖書に日干しれんがの作製に麦稈を混入することが記されています。
左官材料「スサ」の種類と特徴
一般的には土物の仕上げには藁スサ、漆喰やその他のプラスター仕上げには麻スサ、大津磨きなど高級な仕上げには紙スサが使用されます。
藁スサ
藁スサは荒縄や米俵を作る際に出る藁などから作られます。
藁からあくが出てシミになりやすいため土壁に使用されてきましたが、最近は水に晒してあく抜きされた藁もつくられており、漆喰などの上塗りに意匠目的で使用されることもあります。
切り藁…荒壁土用で稲藁を長さ3~9cmに切断したもの。
中塗りスサ…中塗り土用で古縄などをよくもみほぐしたもの。
みじんスサ…水ごね用で3㎜程度に裁断し節を取り除きあく抜きされたもの。
ひだしスサ…中塗りスサを1cm程度に切ったもの。中塗り土にひだしすさなどを混ぜて表面を整える仕上げ工法「切り返し仕上げ」に用いられることから、切返しスサと呼ばれることもあります。
いずれも藁は新しいものより、刈り入れてから年月が経っているもののほうが良いとされています。
麻スサ
主に黄麻とマニラ麻を原料とし、麻袋や麻のロープなどを作る際に出る残り物から作られます。
船具のロープなどを切断してつくられた浜スサ、マニラ麻製品から作られたマニラスサ、硝石が入った黄麻から作られた硝石スサ、菜種油を搾った袋から作られた油スサなどがあります。
未晒しのものは下・中塗り用に用い、漂白して白くしたもの(晒しスサ)は上塗りに用いられ、漂白の程度によって白雪、上晒しスサ、中晒しスサなどに分けられます。
紙スサ
京都御所や桂離宮などに用いられているパラリ仕上げ・パラリ壁と呼ばれる漆喰仕上げには紙スサが使用されています。
藁スサ、麻スサ、紙スサのほかにも、化学繊維、ガラス繊維、針状鉄線などを使用したものもあります。
左官材料「色土」の種類と特徴
左官の上塗りに使用される土で、京都の本聚楽土や滋賀の江州白土、三重の浅黄土などが有名です。
色土はそのまま使用して素材の色を活かすこともできますが、土同士を配合してオリジナルの色を作り出すこともできます。
採掘したばかりの色土は土の塊になっているため、乾燥させたものを機械や棒ですり潰して細かくし、ふるいにかけて粒度を揃えます。
色土だけでは乾燥時の収縮が大きいため、細かく振るった砂やスサ、糊などを入れて強度を上げてひび割れを予防します。
本聚楽土…京都の聚楽第付近で採れる最高級の色土です。2024年1月、聚楽第の西外堀の想定地で幅12mの堀状遺構が出土したと発表されたのですが、出土した遺構の大半が聚楽土の採掘跡だったことがわかりました。
江州白土…大津磨きなどに使用される色土です。色土を使った磨き壁の代表格といえば大津壁です。何工程もかけ光沢を出していく大津磨きは、左官職人の技術や経験が凝縮されています。
浅黄土…粘性が高く保水性があるため、モルタル混和材として古くから使われています。
琉球朱華…琉球朱華(りゅうきゅうはねず)は鮮やかな赤い色が特徴的な色土です。
色土は天然素材のため、色土が枯渇してしまったり、採掘現場に建物が建ってしまったりすると採掘できなくなってしまうため、品切れになってしまった色土も少なくありません。